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「このパンフレットのここ、温泉もあるって書いてある」
夕食後、リビングのテーブルに並べた旅行雑誌とスマホの画面を交互に見ながら、わたしたちは旅行の行き先を決めようとしていた。
「温泉もいいけど、ほら、ここ。露天風呂から海が見えるって。すごくない?」
來が覗き込むように差し出してきたスマホの画面には、青い海を背にした小さな温泉宿の写真。
「……え、ここ、ちょっとオシャレすぎない? 高そう」
「一泊だけだし。たまには贅沢、してみたくね?」
來の目は真剣そのもの。
普段なら冗談交じりに笑って流すくせに、こういうときだけ本気になるからずるい。
「電車で行けるし、駅からも送迎あるって。あとは、俺が手配しとくから」
「じゃあ……お願いしようかな」
わたしの返事に、來は小さくガッツポーズをして見せた。
ソファの脇に出していた小さなスーツケースをふたりで広げると、來がいそいそとTシャツや歯ブラシを入れ始める。



