夫の一番にはなれない



「奈那子先生、これ見て!今度イベントもあるらしいよ!」


早苗がそう言って酒井さんのスマホを覗き込む。


「わたし、ちょっと行ってみたいかも」


酒井さんのその一言に、早苗が「行こ行こ!一緒に!」と声を弾ませる。

その笑顔のやりとりに、奈那子は心から「ありがとう」と呟きたくなった。



放課後。

夕焼けに染まるキッチンで、奈那子と來は二人並んで夕食を囲んでいた。


「最近、保健室の雰囲気変わったよな」


ご飯を口に運びながら、來がぽつりと呟く。


「うん。なんか、あの子たちの空気がやさしくて」


奈那子が箸を置いて、ふわりと笑う。


「奈那子がやさしいから、そうなるんだよ」


洗い物を始めながら、來が当たり前みたいに言うものだから、奈那子は思わず赤面する。


「そんなこと……」


けれど、反論できるわけもなく、ただ照れたまま後片付けを手伝う。

夕食を終えたあと、二人はいつものようにソファに並んで座る。


湯気の立つ紅茶を手に、まったりとした時間が流れていく。