そう書き終えたとき、不思議と肩の力が抜けていた。
手紙を三つ折りにし、封筒に入れて封をする。
その動作に、自分の想いを託すように。
リビングへ出ると、來がソファに座ってニュースをぼんやりと眺めていた。
その手にはマグカップが握られていて、キッチンからはほんのりとコーヒーの香りが漂ってくる。
「來、コーヒー入れたの?」
「うん。お前の分もある」
來はそう言って、自分の隣のテーブルにそっとマグカップを置いた。
奈那子は一瞬ためらい、そしてその隣に腰を下ろした。
「ありがとう。……ねえ、來」
「ん?」
「今週末、一緒に散歩でもしない?」
來の視線が、驚いたようにこちらを向く。
しばらくそのまま無言が続いたあと、ふっと微笑んだ。
「いいな、それ。久しぶりに、ただのんびり歩くのも悪くない」
「うん。わたしも、そう思って」
奈那子は、自分の中の小さな変化を確かに感じていた。



