誰にも届かないかもしれない。

届いたとしても、また拒絶されるかもしれない。


それでも、このまま終わらせるわけにはいかなかった。


「今度は、話したくなったらでいい。わたしは、待ってる」


玄関を出ると、雨は少しだけ弱くなっていた。

それでも空はどこまでも灰色で、まるでわたしの心を映しているようだった。


歩き出しながら、ポケットに入れていた手紙を取り出す。

結局渡せなかったその手紙を、もう一度、読み直そうと思った。


この気持ちが本当に届くには、まだ言葉が足りなかったかもしれない。

わたしはまだ、教師としても、一人の大人としても、足りないのだ。



でも、それでも。

また、行こう。

何度だって。


この扉が閉じている限り、わたしはきっと――何度でも、立ち尽くすのだろう。

その向こうから、ほんの少しでも、声が聞こえる日を願って。