私の胸が締めつけられた。
あの子が、そんなふうに自分を責めていたなんて。
私の知らない場所で、そんな気持ちを抱え続けていたなんて。
「僕たちが本気で彼女を必要としていると伝えなければ、彼女はずっと閉じたままです。家に閉じこもっているのは、ただ怠けているからじゃない。もう、誰かに『会いたい』と思われていないと感じているからなんです」
沈黙の中に、來の熱だけが残った。
私は、ただその横顔を見つめていた。
教師として、生徒に向き合うその姿。
そして、家で見せるどこか不器用な“夫”としての姿。
その両方が、まっすぐに重なって見えた。
「……養護教諭として、私からも一つだけ」
意を決して、手を挙げた。
「酒井さんは、保健室で少しずつ心を開きかけていました。それは、ほんの些細なやり取りでしたけど……それでも、彼女の表情が変わっていったことを、私は見ていました。今、彼女はきっと迷っています。それでもまだ、手を伸ばせば届く場所にいると思います。だから、どうか……もう一度だけ、踏み込んでみてほしいんです」
私の言葉に、誰かが小さくうなずいた。
会議は静かに、でも確かに、前に進んでいった。



