そろそろ、わたしも自分の荷物をまとめて、次の部屋を探さなくてはいけないかもしれない。
何もなかったこの結婚生活が、静かに幕を下ろそうとしている。
でも――もし本当に彼を愛していなかったなら。
この終わりを、こんなにも静かに受け入れられるのだろうか?
「……うそ」
気づけば、スマホを握ったまま、視界がぼやけていた。
涙が、止まらない。
わたしたちは契約で結ばれた関係だったはずなのに。
なのに、どうして。
この気持ちはいったい、何?
苦しくて、切なくて、さびしくて――痛い。
だけどこのときのわたしは、まだその感情の名前を、知らなかった。



