夫の一番にはなれない



「來、今日は何時に帰ってくるんだろうね」


小さくつぶやいた自分の声が、やけに響く。

誰もいない部屋で、たった一言つぶやいただけなのに、心細さが一気にこみ上げてきた。


スマホを手に取り、LINEを開いてみても、來からはまだメッセージは来ていなかった。


飲み会だから、きっと遅くなるのだろう。

信じたいのに、不安が膨らむ。


わたしたちは今、ほんの少しの誤解と沈黙で、また遠回りをしようとしている。


來が帰ってきたら、きちんと話をしよう。

そのときは、ちゃんと自分の言葉で。


そう決めたはずなのに、夜の部屋でひとり、わたしはただ、心のなかで繰り返していた。



「どうか、わたしの気持ち、伝わりますように――」