夫の一番にはなれない



***

日曜の午後、久しぶりに一人で買い物へ出かけた。


來と一緒に過ごす時間が増えてきて、こうして2人きりの時間にも慣れてきたころだった。

最近は家にいるだけで落ち着けるし、來がいると気持ちが穏やかになる。


でも、ちょっとしたプレゼントでも買って帰れたら――そんな気持ちもあって、駅前のショッピングモールへと足を運び、來には店の前で待っていてもらって、わたしひとりで店内へと入った。


手に取ったのは、シンプルなグレーのマグカップ。

來が好きそうな、無駄のないデザイン。

家の中でさりげなく使ってもらえたら嬉しいなと思っていた、そのときだった。



「……奈那子?」


突然名前を呼ばれ、手が止まった。

――この声、聞き間違えるはずがない。


恐る恐る振り返ると、そこに立っていたのは望だった。

2年ぶりに見る顔。変わったようで、変わっていない。

穏やかな表情に見えるけれど、どこか疲れているようにも見えた。


「久しぶり……元気だった?」

「うん。そっちは……どう?」

「まあ、それなりに。仕事ばっかりだけどさ」


何を話していいのかわからず、視線を彷徨わせていると、望が苦笑した。