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その三日後の日曜日、わたしは二十八回目の誕生日を迎えた。
「イチゴのショートケーキとイチゴのタルト、どっちがいい?」
お昼ご飯を食べ終わったあと、來がふいに外出して戻ってくると、両手にケーキの箱を抱えていた。
まさか――と思う。
「來、このケーキ……」
「奈那子、今日、誕生日だろ?だから、買ってきた」
その一言で、胸の奥が一気に熱くなる。
さっきのお昼時、「デザートは食べないように」なんて言っていた彼の必死な様子を思い出した。
わたしが杏仁豆腐に手を伸ばしたとき、やけに慌てて止めたのは、これのためだったのか。
あのとき教えてくれてもよかったのに。
……いや、サプライズにしようとしてくれたのかもしれない。
そう思うと、あのときの彼の挙動がなんだか愛しくさえ感じる。
「それにしても……両方イチゴなんだね」
「奈那子、好きだろ?イチゴ」
「……うん」
好きなケーキの話をしたことなんてなかったはずだ。
でも、わたしが春先にイチゴをよく食べていたのを覚えてくれていたんだろう。
そんな何気ない行動からわたしの好みを汲み取って、わざわざ選んできてくれた。
それだけで、もう十分に嬉しかった。



