「……なんで中谷先生?」
「中谷先生は、もう何年も進路指導に関わっていてね。2年くらい前にも、美容専門学校を志望していた生徒の相談によく乗っていたのよ。親との話し合いの場もちゃんと作ってくれたりしてね」
「……そうなんだ」
「話はわたしのほうからもしておくから。安心して相談してみて」
そう伝えると、田淵くんはようやく少しだけ口元をゆるめた。
きっと、彼の中でようやく誰かに受け止めてもらえたという感覚が生まれたのだろう。
夢をあきらめずに、反対されても前に進もうとしている彼の姿を見ていると、自分のことを考えずにはいられなかった。
田淵くんが保健室を出ていく、その背中を目で追いながら思った。
わたしは今、何をしているんだろう。
わたし自身は、前に進めているのだろうか――と。



