わたしたちの結婚は、誰に話しても首をかしげられるような始まりだった。

恋に落ちたわけじゃない。運命なんて言葉とも、無縁だった。


ただ、ある日、傷ついた者同士が偶然出会って、

少しだけ温度のある場所に身を寄せただけ。



「俺たち、結婚しない?」


彼はそう言った。

わたしは頷いた。


それがどれほど無茶なことか、わかっていたのに。


たとえ、そこに愛がなかったとしても――

わたしは、ひとりになるより、マシだと思った。



もう、なにも失いたくなかったから。