† of Anthology~愉の片々

真輝ちゃんは、極端な言い方をすればゲテモノ食いだ。

なにせ、人間を食べるのだから。

僕は鍋の中でおたまを回しながら訊ねた。

アル
「真輝ちゃん、いつも『食事』の時には腸をかっ捌いてるよね? 僕は血しか味わわないから知らないんだけど……やっぱりあそこは不味いの?」

真輝
「別に。食べられないわけじゃないわ。極端に不味いわけでもないし」

アル
「じゃあなぜ残すの?」

真輝
「だって、食道から胃、小腸から大腸、その中には普通なにが、そしてどんな状態で入ってると思うの?」

アル
「んー」

……考えないほうが、いいかもしれない。

苦笑しながら、真輝ちゃんの前にスープを置く。

アル
「まあ、それを想像しちゃったら、食べるに食べられないね」

真輝
「そうでしょう?」

言って、スープを一口。途端、苦しみ始めた。尋常じゃない汗が。

真輝
「ぐっ……!? こっ、これ……!」

アル
「どうかした?」

真輝
「まま、ま、ま……」

アル
「まま?」

真輝
「豆が入ってる……!!」

時々、変なところで彼女が『鬼』だということを思い出す。

コーヒーは平気なのにね……

難儀な子だよ、真輝ちゃん。