入学式が終わった。


お母さんと帰ろうとすると、途中で雨が激しくなった。

「どしゃ降りだね、早く帰ろう」

「うん」



傘を差していても、これだけの雨だから、やっぱり制服は濡れた。



雨の日って憂鬱だな。


髪はボサボサになるし、服も濡れるし、床は滑るし。

お母さんは、下を向いている私に話しかけてくる。


「友達出来た?」

「出来てないわけではないけど、、、」

「かっこいい人いた?」

「ちゃんと見てない。あと、彼氏いらないから」

「まぁ、これからね」

「なにそれ」

お母さんはニヤニヤしながら前を向く。
そして、私に期待するように靴音を鳴らした。




私に彼氏なんていなくていいんだ。






「ただいま」

中学校より人が多くて疲れてしまったので、休むために自分の部屋へ向かう。

「美優、どこ行くの?」

「部屋」


それだけ言って、ベッドにダイブした。


本当に疲れた。













――”透真”ってどんな人なんだろうな。

















「美優、何してるのー?ご飯できたよー」

お母さんに呼ばれた。

ベッドでゴロゴロしていたので、寝てしまっていた。

そのせいで、髪が乱れた。

最悪だ。

重い体を起こして、髪をとかしてからダイニングに行った。




階段を降りると、好物のハンバーグが出来ていた。

「え、このハンバーグって、、、」

「私が作ったの!入学おめでとうー!」

「ありがとう。あ、お姉ちゃんは?」

「まだ、勉強だって。」

「そっか」




私には、2歳離れた姉の優奈がいる。

成績優秀で、見た目も綺麗で、私とは正反対のお姉ちゃん。



待ちたいけれど、とても空腹だったので食べることにした。



「いただきます」

一切れ口に入れるといつもの味が広がる。改めてお母さんの料理が一番好きだと思う。

お父さんにも食べてほしいな。

お父さんは、二年前からベルギーで仕事をしていて、日本に帰ってくるのは、年に二度くらいだ。


次はいつだろう。







「ご馳走様でしたー」



明日から授業だし、寝る準備しようかな。


寝る準備をしようとすると、後ろから軽やかな足音が聞こえた。


「にゃーん」

「つむー来たの。よしよ~し」


お腹がすいたのか、猫のつむぎが私の足元で鳴いている。


「はいはい、分かったよ~。ちょっと待ってね~」

そう言ってつむのお皿にご飯を入れる。



「ご飯入れたよ~。」

「にゃ」

「つむは本当にかわいいな!」

つむの頭をなでて、寝る準備をする。



「寝るね。おやすみ」

「今日は早いね。おやすみ」

お母さんと数秒の会話を終わらせ、ベッドに横になった数秒後に眠りについた。










このときも、ずっと豪雨が続いていた。