花からミルフィーユ

僕は彼女に連れられて森の奥へと入って行った。

こんなに綺麗な自然が日本に残っていたんだ。

人間の手が一切つけられていないその自然界は僕の存在を小さなものにした。

しばらく歩くと目の前に建物が現れた。

私はここまで。後はあなたが一人で行くのよ。

そう言うと彼女は来た道を戻って行った。

扉を開くと蝋燭だけが唯一の光だった。

僕はあてもなく彷徨っていた。

いくつか扉があったが蝋燭の続く廊下をひたすら歩いた。

行き止まりになると目の前に扉があった。

そっと開くとカーテン越しに人影が見えた。

明かりは一本の蝋燭だけだった。

きっとそこに今回の目的があるはずだ。

僕は中に入るとしばらく立ち止まっていた。

「待っていたわ。こんな目に合わせてしまったことは本当にごめんなさい」

僕は今までの経緯を全て話してもらいたいと言ったがそれには答えなかった。

僕はじっと次の動きを待っていた。

するとカーテンが開きそこにいたのは少女だった。

しかも背中に蝶々の羽根が生えていた。

僕はその顔に見覚えがあった。

昔僕の家の前に住んでいた幼馴染だった。

「どうしてもあなたに伝えたいことがあったの」

彼女はそう言うと体をこちらに向けた。

「お願い。もう一度私を探して。そして今度は私を離さないで」

その瞬間、彼女は天井をすり抜けあたりは真っ暗になった。


僕は目が覚めると部屋のベッドで寝ていた。

時計を見ると夜中の2時だった。

日付を確認するとあれからちょうど一週間が経っていた。

僕は深くため息をつくと冷蔵庫から缶ビールを取り出した。

あの子は今どこにいるのだろう。

探す術もなかった。

しかし探さないわけにもいかなかった。

夜空には月が僕の部屋を照らしていた。

その時、一匹の蝶々が月の光に照らされて飛んでいた。

「きっとすぐに君を見つけ出すさ」

青色の羽根が夜空を煌びやかに舞っていた。