花からミルフィーユ

お店を出る時、彼女は不思議なことを言っていた。

「大丈夫。全て上手くいくわ」

ん?と聞き返したが彼女は微笑むと店へと戻って行った。


会社に着いたのは夕方だった。

誰もが真面目に仕事をしていた。

特に何の問題もなかったようだ。

従業員達が全員帰ってしまうと僕はコーヒーを淹れ煙草に火をつけた。

携帯が鳴った。

もちろん名前も番号も表示されていなかった。

夜中の出来事が夢ではなかったを改めて認識した。

「来月の日程が決まったから伝える」

そう言って日時と待ち合わせ場所を伝えられた。

「本当に申し訳ないと思っている。悪く思わないでくれ」

そう言うと電話は切れた。


翌日従業員には適当な理由をつけて来月一週間仕事を休むことを伝えた。

それぞれに有給を与えスケジュールも組んでもらった。

彼女達は喜んでいた。

最低限の仕事と戸締りだけをやってもらえればよかった。


そしてその日はあっという間にやってきた。

待ち合わせ場所は江東区にある公園だった。

時刻は21時になろうとしていた。

僕の前に黒の車が停まると中に乗ってくれと言われた。

しばらく無言が続いた。

仕事で疲れていたのだろうか。

僕はまもなく眠ってしまった。

起きた時は船に乗っていた。

今さら驚くことなどなかった。

白のカッターシャツに黒のスラックス、黒のサングラスをかけた男が三人いた。

いかにも怪しい。

今自分がどこにいるのかも検討がつかなかった。

目の前に島が見えてきた。

到着すると小屋の前に一人の女性が立っていた。

今日はもう遅いからこの小屋で休んでほしいとのことだった。

中はベッド、トイレ、シャワールーム、洗面所と最低限のものは揃っていた。

僕はシャワーを浴びるとそのままベッドで眠った。

起きた時には外は明るく快晴だった。

しかし時間はわからなかった。

僕がつけていた腕時計も知らない間に外されていた。

昨夜の彼女が入ってくるとパンと牛乳を渡されたが断った。

それよりも早く帰りたかった。