「誰しも人間、人に好かれたい、愛されたいと思っている、もちろん
万桜もその一人だ。けど万桜は少し違う。自分が大切にされるよりも、
他人を優先する真っすぐな優しさがある」


あたしは、フンッと鼻を鳴らして腕組みする。


「あたし、そーいう万桜のところ前々から、大っ嫌いだったの。自分の
幸せよりも、他人の幸せを祝福するなんて、そんなのただ損するだけ。
ずーっと理解不可能だったわ」


「ーー、そこが、栗栖の決定的なズレた考えだ」


間髪入れずにピシャリと、桂田くんは真剣にあたしを見つめて、
そう言った。