王子様に恋の魔法をかけられて。


そのあと、石田先生から長い説明を受けたけれど、俺は上の空で
頭になにも入ってこなかった。


石田先生と看護婦がでていって、万桜の病室に残っているのは、
俺と栗栖。


俺は、栗栖に促されて、万桜が眠るベットの脇に丸椅子を引き寄せて座る。


飾り気もない白い壁に、窓に激しく打ち付ける雨粒。


「ううっ……、万桜、万桜ぉ……、お願いだから起きてよぉ………」


無言でうつむく俺に対して、栗栖は立ったまま泣いていた。