画面に表示されている【万桜】の二文字が、俺の目に飛び込んだ。


期待と不安に胸がはちきれそうになりながら、電話にでる。


「万桜!? 今、どこにいるんだ!? 俺、万桜が帰って来ないから
心配で仕方なくてーー」


他にも言いたいことは山ほどあったけれど、俺の声は万桜ではなく別の女に
よって遮られた。


『もしもし、桂田千星くんだよね? あたし、栗栖花歩』


「は? 栗栖?」


『桂田くん、今から言うこと、落ち着いて聞いてね? ーー、あのね、
万桜が車にはねられて、近くの総合病院に救急搬送されたの!』


スマホが、手から滑って俺の足元に落ちた。