わたしは手を前に突き出して、徐々に迫ってくる千星くんの顔を 制する。 千星くんは素直に引いてくれたけれど、わたしはかーっと赤面しているのを 見られたくない気持ちでいっぱいだったのであった。 次の日の、5月15日水曜日の朝。 今日は祝日で学校はお休み。 わたしは家でのんびり過ごそうと思ったんだけど、今自分が突っ立っている ところはなぜか賑やかな繁華街だ。 遡ること、1時間前ーー。 『万桜、課題のプリントもう出来た?』 『え? うんっ、昨日済ませたばかりだよ』