王子様に恋の魔法をかけられて。


「ま、待てっ……!!」


そうわたしは気づいて追いかけようとしたけれど、通り魔は靴音を荒々しく
たてながら、その場から逃げていってしまう。


「千星くん、千星くん……っ!!」


涙腺が緩むのをこらえながら、名前を呼んだけれど、千星くんはわたしの
腕の中でうずくまったまま、目を開いてくれない。


ドロリ、とわたしの手に血がついた。


わたしは、救急車を呼ぼうと思ったが、あまりにも大量の血が出血していて、
病院に着く前に千星くんは間に合わないであろう。