「なんかもうそのセリフがさぁ!おかしいんだよなぁ!」

「ほんとにだめ?俺結構我慢してきたんだけど」
「っあ、ちょ、ち、近づいてこないて!」



近づいてくる朔から逃げるように後ずさると、トンと背中に何かが当たる。

慌てて後ろを確認すると、そこにはもう逃げ道はなくて、ただの壁があるだけだった。


「(う、うそ……)」


ごくり、唾を飲み込む。



「澪は警戒心高いように見えて、意外とガードゆるいから」
「ひっ、」

「だからこーやって捕まっちゃうんだよ」



私を囲うように壁に手をついた朔が、目を細めて笑う。
いつも嫌というほど一緒にいるから慣れているはずなのに、今は、すぐ近くにいる朔に心臓が止まりそうだった。