聞くや否や、体は引き寄せられるように勝手に走り出して、両手を広げる逞しい胸に飛び込んだ。

 しゃくり上げる声が漏れて、まさに号泣の言葉が相応しく、涙が堰を切ったように溢れ出して止まらない。

「私は子猫たちにいけないことをした、命を奪った。苦しいよ苦しいよ」

 号泣して思いの丈を絞り出さないと、心が壊れてしまいそう。

 強くつよく、しがみつく私の頭を撫でながら、抱き締めていてくれる。

「自分が怖い。命を消しちゃうなんて、私はなんてことしちゃったの」

「つらく苦しい哀しみで怖かったよな、こうしていたら怖くないか」

 私の心も体もしっかりと抱き止めた卯波先生が、診察用に獣医師が座る丸い回転椅子に座り、私を両足のあいだに入れ、おなじ目線で抱き締めていてくれる。

 卯波先生の首に顔を埋め、ぎゅっとしがみつき衝動の赴くままに、悲しい思いを抑えきれない。

 痛い哀しみの涙が、心の底から洗い流すように止まらない。

「つらいよな、吐き出していいんだ」
「ごめんなさい、悪いことして、ごめんなさい」

「俺もおなじだ、痛いほど気持ちがわかる。俺にぶつけて楽になれ」

 どうしようもない罪悪感と苦しみを分かち合い、救ってくれる安心感に包まれる。

 私の勢いに、驚いたようにサニーが追いかけて来ていて、小さく鼻をくんくん鳴らしている声が心配そう。

 ふだんクールなサニーが鳴くなんて。
 健気な鳴き声も、拍車をかけるように涙がこみ上げてきて溢れ出させる。

 抱き締めてくれる卯波先生と、心配そうに足に絡みついて片時も離れないサニー。

 二つのぬくもりが、心と体に優しく触れてくれて、少しずつ気持ちの整理ができてきた。

「落ち着いようだな。自分の心を騙すな、かわいそうだ。心を抱き締めてあげるんだ」

 吐く息とともに、耳に直接届く言葉のぬくもりが、私の心と瞳に温かな雨を降らせる。

 サニーが、卯波先生の太ももに右前肢を乗せて、心配そうに見上げながら、まだ鼻を鳴らして離れない。

「また号泣、泣かせてしまったか」
 頭を撫でていた大きく温かな手が、あやすように背中を軽く叩いてくれる。

「泣きたいだけ泣け。哀しみやつらさは、すべて俺に捨てろ」
 心の中から苦しみや哀しみを、卯波先生が消し去ってくれているみたい。

 坂さんが言った卯波先生の醸し出す安心感って、この空間なんだ。

「泣き疲れたのか?」