策略家がメロメロ甘々にしたのは強引クールなイケメン獣医師

「冗談だ」
 軽く笑って腕枕をする左手で、私の髪を五本の指のあいだにからませて撫でてくる。
 と、あっという間に軽く抱き上げられた。

「俺の胸の上に輝くばかりの白い裸体をあずけ、心臓に頬を寄せ腕に絡みついてくる」
 卯波先生に触れていると安心するし、とても気持ちがいいの。

 暖炉の前に来た卯波先生は、私を前に座らせ、うしろからブランケットといっしょに抱きかかえてくれた。

「温かい、卯波先生の心も体も」
 どんな防寒にも卯波先生に包み込んでもらうことには敵わない。

「ずっと桃が恋しかった。桃が幸せなときは俺も幸せだ」

「私のセリフを取られました。さあ、私は、なんて言えばいいんでしょう」
「そのセリフは、どこかで聞き覚えがある。遠い昔の話だ」

「記憶がぎっしり、頭の中に詰まってる卯波先生のセリフですよ。しかも、さっきです」
「そうだったか?」
「とぼけて」

 私の言葉に結んだままの唇に微かな笑いを浮かべた卯波先生の表情が、ゆったりとした優しい笑顔に変わった。

「赤い糸で心が結ばれた桃と体も結ばれた。これからも、ずっと桃の心と体を気持ちよくさせる」

 見つめ合い、触れ合い、全身でお互いを感じる幸せな空間が永遠につづくのね。

「このブランケットにも焼きもちを妬くのか」
 焼きもち妬きの欲しい答えはわかっている。
 軽く微笑み浅く頷いた。

「とっても気持ちいい」
 汗がひいた卯波先生のさらさら肌触りのいい腕の中で、すりすりする。

「無邪気な子猫だ。ふだんの桃はラゴムで走り回っても、涼しい顔をして汗ひとつかかなかったのに凄く汗ばんでいる。ベッドの中では」

「違う、卯波先生の腕の中だから」
「数々の桃の殺し文句に、次々とハートを射抜かれた」

「卯波先生のいいところ教えてあげましょうか?」
「またか。言いたいんだろう、どうぞ」

「私のことを大好きなところ」
 私の言葉に熱い息を漏らして卯波先生が微笑む。照れているの?

「これ以上、その気にさせるな、桃の体を休めないとダメだ」
 卯波先生の心臓の音が、どくんどくんと耳に響いてくる。

 その鼓動と火照った卯波先生の体が、私を心地よい深い眠りに誘う(いざなう)

「これから俺たちの結婚式の準備もある。それに、いずれ桃は俺のところに転職するから忙しくなる。聞いていないな、うとうとし始めた」

 瞼をそっと撫で下ろしてくれるから、睡魔に勝てない。

「ずっとそばにいて、離れたくない」
「ほぼ寝ているのに強くしがみついて甘えてくる」

 控えめな笑い声が漏れて、厚い胸板に抱き寄せられた。

「桃が起きたとき、すぐそばにいる、安心しておやすみ」
 低く優しい声で囁かれる。

 幸せと安心感に包まれ、意識が遠のき深い眠りに落ちた。