放課後になり家に帰ると、私は早速八尋くんにもらった袋をカバンから取り出した。


 中を見てみると、私の好きなラスクが入っていた。


 袋を開けて、ラスクを取り出す。


 そしてひとくちパクッと食べた。


 その瞬間、今まで私が八尋くんと話したことが頭の中に流れてきた。


『…涼風さんは疲れてない?』


 それが初めて彼と交わした会話。


『そっか!ありがとう、涼風さん』


 その笑顔を、私は忘れることができなかった。


 2人でハートを作って、プラネタリウムの中で撮った写真。


『わかった!涼風さん、すごいな』


『ううん、数学できるの、尊敬するよ』


 席替えで隣になった時に言われた。


 これがなければ、今でも普通に話せなかっただろう。


『遠くなっちゃったな』


 再び行われた席替えで、席が離れてしまった時に言われた。


『…ありがとう』


『…お返し、待っててください』


 好きな人に、初めてあげたバレンタイン。