「……『死ね』かあ。それはさすがに酷くないー?里菜ちゃん」
「先輩みたいな女の敵は、馬に蹴られて死ねばいいんですよ。あ、じゃあリナこのへんで曲がるんで〜。さよーなら〜」
ちっとも家の方角じゃない交差点を曲がって、足早に先輩から離れた。当然だけど、先輩は追ってこなかった。
……嫌い。嫌い。超嫌い。
リナはあの男が、世界一大っ嫌い!
*
「何読んでんの?里菜」
翌日、いつも通りマルとチョコちゃんと通学電車の中、マルが手元のスマホを覗き込んできて言った。
「少女漫画だよ〜。アプリで毎日1話ずつ読んでるの」
「あ、私もこれ知ってる。男の子カッコいいよね」
「そ〜。超絶イケメンなうえにヒロインだけを溺愛してくれる……リナもこんな彼氏が欲しいよぉ」
「あはは。そんな男子、漫画の中だけでしょー」
「……それ本気で言ってる? マルだけは言っちゃいけないセリフだけど」
「え?」
「同意」
「チョコちゃんまで! え!?」
マルの彼氏は学校1の秀才で超絶イケメン、しかもマルを異常なほど溺愛しているハイスペックスパダリだ。
リナだってそういう恋愛したい。告白すらさせてくれないクズ野郎じゃなくて。まじで。



