自分が『好き』って気持ちがわからないから、他人のその気持ちはすごく大切にしようとする。

そんな先輩だから、リナは好きになったんだ。


「……じゃあ、なんで……」


先輩は、あのときリナの告白を遮ったの?



「……『特別になりたい』かあ。なるほどねえ」



悩むリナの横で、サオリさんは長いまつげに覆われた垂れ目をふわりと和らげて、小さくつぶやいた。



「諒は、人を好きになれないわけじゃなかったんだね。必要だったのは、『好きになってほしい』って思える相手だったんだ」



彼女の言葉に目を見開く。心の中で、何かが熱を持つ。


「ねえ、きしもーちゃん」


サオリさんは、どこか嬉しそうな顔で言った。



「諒は、いったいいつからきしもーちゃんの『特別』になりたかったんだろうね?」