「あれ。もしかして里菜ちゃん?」
聞き覚えのある声がリナを呼んだ。
少し低くて透き通った、ちょっと特徴的な声。
声がしたほうに目を向けると、私服姿の男性が立っていた。気だるそうな色気のある瞳に、左目の泣きぼくろ。センターでわけた黒髪。
「亮平さん……?」
彼……亮平さんは、嬉しそうに「やっぱりかあ」と笑った。
「久しぶり。その制服……そっか。もう高校生になったんだね。最後に会ったのいつだっけ?」
「……たぶん、二年くらい前です」
「もうそんなになるんだね。元気してる? ……ちゃんと家には帰ってる?」
亮平さんが目を細めてリナを見つめる。
あの頃と同じ、優しい大人の目。……女の子の弱いところにするりと入り込む、ずるい大人の男の人の目。
亮平さんは、中学生の頃に一時期だけ付き合っていた大学生だ。
リナが中学二年生のとき彼は大学一年生だったから、たぶん今三年生。



