「……よし!」
カチッとガスコンロの火を止めてエプロンを脱ぐと、スマホとパスケースだけ持って家を出た。
たぶんあのとき信号待ちしてた横断歩道のすぐ近くの歩道橋のはず。とりあえず電車に乗らなきゃ。
探すだけならタダだ。付近を捜して、もしなければ諦めればいいんだから。
……~♪
学校の最寄り駅に着いて、電車を降りて改札を通ったところで、スマホが鳴った。
画面を見てぎょっとする。
……え!? 松原先輩!?
「は、はい」
『あ。里菜ちゃん、お疲れー。今大丈夫?』
「はい……」
いきなりなんだろう。耳元から聞こえる慣れない電話の声にドキドキする。
そんなリナのドキドキとは裏腹に、先輩の声はなぜかちょっと固かった。