『別に普通の家系だと思いますけど…どうしてですか?』
「そっか、じゃあただの気のせいかも!今の話忘れて。」
彼はあっさりとそう言い、柔らかい笑みを浮かべる。
「あと同級生なんだから敬語じゃなくていいよ。呼び方も春流でいいから」
いやいや、そんな簡単に切り替えられないって……。
漂うオーラに気圧されて、自然と敬語になっちゃうんだよ。
しかも初対面で下の名前呼びは、田舎暮らし出身の私、すでに都会の距離感について行けない。
『えぇ…』
「ほら〜呼んでみて」
『…春流くん』
「それでいいよ。転校生って馴染むの大変でしょ?なんかあったら頼っていいから」
……この人、絶対モテるタイプ。
そう確信した直後──
「月城くんおはよ〜!…誰?その子」
女子たちの視線が一斉に突き刺さる。
一緒に教室へ入ったせいで、注目の的になってしまった。
しかもキャリーケースまで持ってくれたせいで、まるで特別扱い。
ありがたいけれど……
女子からの刺すような視線が痛い。
友達のいないこの状況で女子に嫌われるのは最悪だ。
だから春流くんには感謝してるけど、必要以上に関わらないほうがいいかも…
必要最低限の距離感で…
できることなら面倒事は避けたい。
「隣の席だから、よろしくね」
あ、必要最低限の距離感無理かも。
そんな偶然席が隣とかいう少女漫画みたいなことある?
『…う、うん!ありがとう』
視線を感じながらも渋々席に座った。

