団長室の手前まで戻り、凪徒は朝食をご馳走になったお礼を言った。

 自分の名を呼ぶ声に気付き、近付く気配に振り向いた。

「秀成……?」

「凪徒さんっ、これ見てください! やっとハッキング出来たと思ったら、こんなことになっていて……」

 息つく間もなくノートパソコンを開いて見せる。

 既に団長は部屋に戻り、窓の向こうでお茶を()れていた。

「なっ……んだ!? これ──」

 パソコンに(うと)い凪徒でも、さすがにその画像のおかしさには気が付いた。

「でしょ? やっぱり邪魔してる奴がいるんですよ! 僕、絶対(あば)いてやりますから!!」

 そう断言する秀成の両目にはメラメラと炎が燃え立つようだった。

 障害が多ければ多いほどやる気が起きるのは、まぁそれはそれで良いことだが……開けてみればこの()(さま)とは、確実に怪しい影が(うごめ)いていることが感じ取れた。

 ──団長……?

 お茶をすすりながらテレビを見始めた団長の姿を再び目に入れる。

 モモを『宝物』と言いながら、「お国のためだろ?」とのたまった団長。

 『コレ』も団長の知るところなのか?

「とりあえず車に戻ろう、秀成の分の朝食あるぞ」

 そう言って持ち帰ったマフィンの紙袋を掲げてみせる。

 喜んでパソコンを畳み歩き始めた秀成の後を追いながらも、凪徒の心は団長室の入口に置き去りにされた気分だった。



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