「あの……団長。団長にとってモモって何ですか?」

「ん? 随分唐突だの」

 凪徒は暮から訊かれた質問を団長に投げてみた。

 まだ出せないでいる自分の答えを、代わりに出してもらおうと思った訳ではない。

 団長の団長としての答えが欲しかっただけだ。

「そうだの……モモに限らずだが、()えて言うなら『宝物』かの。もちろんお前も含めて、サーカスのスタッフ・動物達全員」

「宝物……」

 意外に高い位置の答えが返されたため、自分にとっての答えを出すには参考にならない気持ちがした。

 もちろんモモがそんなに低い位置だとも思っている訳ではないのだが──。

「こんなこと、言葉にするもんでもなかろうがの。ま、モモに再会出来れば、おのずと答えは出るんじゃないか?」

「え……?」

 ──モモに再会。いや、団長は「出来れば」と言った。出来なければ──?

「今日を合わせて三日あります。必ずモモを探し出します。もちろん、その前に今日明日の公演は完璧にこなします!」

 凪徒は湧き上がった前向きな気持ちに口角を上げた。

 にこやかな団長の笑顔と共に最後の一口を放り込んで、ゴクリと呑み込み席を立った──。