「凪徒さん……起きてます?」

 少しして物音に目が覚めたのだろう、秀成が足元から声をかけた。

 本来なら無視して狸寝入りを装いたいところだったが、今回は秀成も巻き込んでいての失態だ。

 とりあえず身を起こして、ぼんやりと(かす)む黒いシルエットに返事をした。

「Nシステムですけど、すみませんがもう少し時間を下さい。ちょっと仮眠したらまた挑戦してみます。どう考えてみてもおかしいんですよ。Nシステムの管理者じゃない、おそらく僕と同じような侵入者が邪魔をしてるんです。とりあえず明日の朝には結果を出します」

 秀成の表情は暗闇に(まぎ)れて見えなかったが、その口調からハッキングへの意気込みと、凪徒への励ましの気持ちが感じられた。

「わりぃな、巻き込んじまって」

 ぼそっと一言、何とか言葉を吐き出す。

 暮と話してからの凪徒は、そうでなくても自己嫌悪が渦巻いていた。