上機嫌に輪をかけて車から降りたモモの気配が消えるのを待ち、凪徒は熱心に焼き加減をチェックする暮の横顔に助言した。

「あいつの口調は放っとけよ。根っからの真面目人間なんだろ」

「でもなぁ……」

 胸の内を見透かされた暮は微かにうろたえながら、表情はいつものピエロのような切なさを含んだ笑顔で答えた。

「もう二年になるんだ。みんなに心開けてるのかなぁって、さ」

「……」

 凪徒は何も言わなかった。

 流しの上の車窓から見える遠く(ほの)かな食堂の明かりに、彼もまた何かを思いながら、ただ視線を向けていた──。







★以降は2014~15年に(他サイトにて)連載していた際の後書きです。

 ツンツンな凪徒でございますが、ショーの時だけは愛想が良いですので(苦笑)、今回のイラストはヘの字顔ではございません(笑)。

 前話のモモのイラスト同様、握っておりますのは空中ブランコのロープ、のつもりでございます(汗)。