そんな自己嫌悪の青年の横で、暮は自分の言葉に何か引っかかるものを感じていた。

 ──ああ……分かった。『娘』って言ったことだ。団長にとったら、モモなんてもう『孫』の域か?

 そう思い始めたらつい含み笑いが止まらなくなったが、身動きすらしなくなった凪徒の身体を目に入れて、暮はもう一度口を開いた。

「素直になれよ」

「……え?」

 暮の見上げる、凪徒の見下ろす目線がかち合う。

「お前にとって、モモは何だ?」

「俺に……とって?」

 しばらく凪徒は言葉が出てこなかった。

 自分にとってのモモとは?

 ──そんなこと、考えたことも決めつけたこともない。

「まぁ……答えは急がなくていいさ。それより秀成借りていくぞー。早くしないと団長達の首が長くなっちまう」

「ああ……」

 二人は会話を()めてそれぞれの方向へ向かうためすれ違った。