「宅よ……どっちの味方なんだよ」

「『宅』呼ばわりとは怖い怖い」

 真面目に答える気のない暮に更にむかついた凪徒は、彼の襟元に掴みかかった。

「少し落ち着けよ~凪徒。そうやってすぐ頭に血が上るのがお前の悪いところだ。おれはお前の味方だよ。おれだって幾らお国のためになんて言われたって、モモの自由や未来が奪われるのは御免だ。でもさ、それはきっと団長も同じ筈だと思わないか? だからおれはちょっと様子を見ているって訳。いざとなったらちゃんとやるから待ってろって」

「いざとなったらって……」

 いつものおどけたウィンクと、自分の短気を指摘された恥ずかしさから、凪徒はその手を放して横目に逸らせた。

 ──分かってる……でも時間がない。落ち着いて考えるだけの余裕もない。

「お前だって団長がそこまで薄情だとは思っていないだろ? この二年、団長は娘のようにモモを可愛がってきたんだ。これにはきっと何か『裏』があるんだよ」

「裏……?」

 暮のマイペースに凪徒はふと視線を落とした。

 ──確かに自分は焦り過ぎているのかもしれない。いつの間にか、気付けば周りの空気さえ読めなくなっていた。