「あのぅ……お二人は雇われてここで働いているのですよね? えっと、その……どうして──」

 やっとのことで口を開いたものの、モモはどう尋ねようか悩んでしまい、二の句が小さく消え入ったが、

「「わたくし達はここで生まれ育ったのでございます」」

「えっ?」

 少女の訊きたい質問を読み取った二人は、お互いに顔を見合わせて即答した。

「わたくし達の母は先代の家政婦でございました。父もこちらで運転手として勤めさせていただいておりましたので、ご主人様のご厚意で、母はわたくし達を出産した後も、以前と変わらず仕事を続けておりました」

 花純の言葉に、高岡の外見からも(うかが)える優しい心根が感じ取れた。

「両親が業務の時間、わたくし達もこのお庭で遊び、九歳の時に明日葉お嬢様がお生まれになられてからも、三人姉妹のように分け(へだ)てなく、ご主人様から愛情を戴きました。父が早くに亡くなったこともあり、わたくし達にとってご主人様は父親同然のお人なのでございます」

 それでようやく納得出来た、とモモは深く息を吐いた。

 二人が高岡の病気を告白した時のどうにも切ない表情は、こうした長年の親交があったからなのだ。