鉄棒の横に寄り添っていた高岡は、そっとモモに目配せをしてメイドの元へ歩いてゆき、応答しながら館の方へ去ってしまった。

 モモはそのまま近付いてくるどちらとも分からないメイドのために鉄棒から飛び降りた。

 淡いピンク色のスカートが、まるで桜の花びらのようにフワリと広がってゆっくりと(しぼ)んだ。

「お嬢様、お庭はお気に召されましたか?」

 相変わらずのにこやかな微笑み。

 『お嬢様』と呼ばれることには慣れないが、この双子の姉妹にはモモも好感を持っていた。

「あ、はい……えーと?」

「桔梗です、お嬢様。見分ける方法はこちらでございますよ」

 と、桔梗は自身の左の耳たぶを指差した。凝らさなければ分からないような小さなほくろが目に留まる。



「花純には右側にございますので、どうか覚えてくださいませね」

 桔梗は左で、花純は右……いや、自分から見れば桔梗が右で、花純が左?

 結局見分けられそうもないなと、思わず苦笑いをしてしまう。