「お花が綺麗でございますね。お、おっ、おっ……おと、お父……さ、ま……」

 モモは陽だまりの集まった広大な英国式庭園の中を、高岡紳士を横にしてゆっくりと散策していた。

「そんなに無理はしなくていいよ、明日葉。まぁ、こちらは勝手に明日葉と呼ぶけれど」

「はぁ……すみません」

 とりあえず約束の交わされた本日限りの父娘(おやこ)ごっこのため、まずは明日葉が高岡を呼んでいたように努力してみたが、どうしても流暢(りゅうちょう)には呼びかけられなかった。

「何も「お父様」と呼ぶ必要はないんだ。君はご自分のお父上をどう呼んでいるんだい? それと同じで構わないよ」

「……」

 モモはその言葉に一瞬彼の優しい(おもて)を見上げてみたが、すぐに正面に戻し、進める足先を見下ろした。