「大丈夫ですよ~そんなに難しいことじゃないです。ところでさっきの、モモの携帯ですよね? 何で凪徒さんが持っているんです?」

 もしかしてこいつを敵に回すのは末恐ろしいことかもしれない……凪徒は頭で考えるより早く自分の防御本能が動き出して、素直に夫人の見解を説明した。

「なるほど、それなら返り討ちにするっていうのはどうです? その携帯にトラップ仕掛けて。画面を開いたら爆発するとか? 僕、簡単な爆弾なら作れますよー」

「……いや、そうしたらモモの携帯まず壊れるから……」

 意外なところに鬼がいたなと、とにかく機嫌を損ねないように笑顔を取り繕った。

 準備に向かうため車のドアを開いて立ち去ろうとする凪徒に、再びの秀成の声はいつになく天下無敵の彼を驚かせる。

 (おび)えて振り向く眼前に突如飛び出した握り拳で、もはや卒倒しかねなかった。

「あ、これ。パソコンのお釣りです。お陰でなかなかの高性能モノが買えました」

「そ、そりゃ、どうも」

 ──たとえモモの居場所が突き止められなくても、こいつに説教くれるのはやめておこう。

 凪徒が初めて秀成という『温和なちょいモテオタク少年』を心から恐れた瞬間だった──。



★二人には「ハッキング」と言わせておりますが、現代用語でいう「クラッキング」のことを意味しています。