彼は先程の花純を呼んで、書斎の本棚にある一冊のアルバムを探してくるように頼んだ。

 しばらくして持ち運ばれた古びた分厚い冊子を、懐かしそうに紐解いてみせる。

「うわっ」

 指し示された一枚の写真を覗き込んだモモは、ついしとやかでない声を上げた。

 そこには紳士らしき若い男性と肩を組む笑顔の団長──口髭がないだけで、何もかも今と全く変わらない!

「そう言えば自己紹介がまだだったね。私は高岡 靖之。タマちゃんにはタカちゃんと呼ばれていた。ああ、こっちの写真は皆で海水浴に行った時だ。ほらっ、彼の太鼓腹、ちっとも変わらないだろう? ……そうそう──」

 呆然としながらも眼だけは団長の写真に釘づけになってしまう。

 目の前のご馳走からお預けを喰らったまま、モモは小一時間“タカちゃん”の想い出話に付き合わされることになった──。