「ああ……すまなかったね。気にしないでおくれ。年を取ると涙もろくなるもので……そんな想い出にかこつけているのは重々承知でのお願いなのだが、水曜までの四日間、私の家族ごっこに付き合ってはもらえないだろうか?」

「でも……」

 消極的に言葉を濁して、モモは深く俯いてしまった。

 見下ろした先の紅茶の中に自分の困った顔が映る。

 そして凪徒や暮、団長をはじめ全ての団員の笑顔が……。

「あのっ……本当に団長がこの誘拐騒ぎを起こすようにお願いしたんでしょうか? そうだとしても……きっと皆困惑していると思うんです。いえ……事の真相を知ったら、何故断って帰ってこなかったのかと怒るかも……昨日も公演に出られなくて迷惑を掛けたばかりですし、本当に申し訳ないのですが……」

 モモは紳士の顔を見られなかった。

 話だけを聞いていれば、本来なら受けてあげたいのはやまやまだ。

 団長の意図は全く分からないが、けれどここで優雅に紅茶を飲んでいる場合ではない気持ちがした。