「明日葉は私の娘でね……君と同い年だった」

 ──だった?

 モモは懐かしそうで寂しそうな紳士の俯いた顔に、ハッとした(おもて)を向けた。

「彼女は生まれつき心臓に疾患があってね。それでも随分頑張ったのだが、昨春ついにね……妻も元々病弱で明日葉を産んだ際に亡くなったので、私はとうとう独りになってしまった」

「……」

 誘拐犯へ同情を向ける自分に複雑な想いがしないでもないが、モモはそれを聞いていつの間にか涙を浮かべていた。

「これが娘の写真だ。見てやってくれるかい?」

「あ、はい」

 上着の胸元より取り出されたくたびれたパスケースから、柔らかな笑顔の少女が現れた。

 が、それは最も良く知る自分自身と瓜二つの面差しをしていた。

「え……!?」

「そう……君にそっくりなんだ、桃瀬くん」