「随分盛り上がっていたようだね、部屋は気に入ってもらえたかな?」

「いえ……。あ、はい、お部屋は素敵だと思いました。でも洋服は普通に外を歩ける物を……ではなくて! あ、あたしをサーカスに返してくださいっ!!」

 モモは陽だまりのバルコニーにて、ロマンティックなテーブルセットに腰かけていた。

 目の前の贅沢な朝食に胃を刺激されながらも、にこやかな中年男性に懇願する。

 振り向けばヨーロッパのお城のような可憐で華やかな室内が見える。

 白と淡いピンクで統一されたまるでお姫様のための一室。

 それを人形用ではなく原寸大で体験出来るとは全く思いもよらなかった。

 衣装はどうにも着る気持ちになれず幾度も嘆願して、何とかシンプルなワンピースにまでおさえてもらった。

 それでも普段のジャージやパーカーに比べたら天と地ほどの差のあるレベルだ。

 もちろん着替えの手伝いも丁重に断らせていただいた。