二杯目の茶で喉を潤す。既に外は真っ暗闇だった。

 組織だか機関だか知らないが、モモはそこで無事に過ごしているのだろうか。

 そんなことを思いながら窓の外の星空を見上げて、凪徒は再び団長の姿を目に入れた。

「で……そのナントカって奴はどこに在るんです?」

「さてな。何しろ国家機密だから」

 団長の飄々(ひょうひょう)とした答えが、凪徒のこめかみに力を込めさせた。

「そんないいかげんな話、信じられる訳ないでしょうが! どうして団長は平気なんですっ」

「まぁ……知り合いの知り合いの知り合いくらいだからの」

 そこまで行ったらもはや他人だ。と、凪徒は腹の煮えくり返るのを何とか収め、平静を取り戻すために大きく息を吐いた。

「もちろんモモは丁重に扱われ、テストを終えた(のち)、不合格なら四日後ここへ戻される。が……合格すればいずことも分からない養成所に送り込まれ──」

「団長はモモを手放してもいいって言うんですか!?」

「──お国のためだろ?」

「個人を犠牲にして、何が国家だっ」

 ギリギリと奥歯を噛み締めた凪徒の背中は徐々に丸まり、怒りの我慢も限界に近付いていた。