「お前……本当に分かりやすいの」

「……え?」

 そんな風に独り思い出に浸っていた凪徒は、自分の顔を覗き込む二人の顔の近さに驚愕し、つい背もたれにのけぞった。

「何をどう思い出していたのかが、手に取るように分かったぞ」

「ホント」

 団長は感心したように呟き、同感の想いの暮が一言頷いた。

「いやだって……ブランコに一度も乗ったことのない卒業間近のタダの中坊が、経験者の受験者達をあっと言わせちゃったんですよ? そりゃ面白かったでしょ」

「坊はないだろ、坊は。あれでも性別は女性だ」

「そんなこと分かってます」

 凪徒は変なところにツッコミを入れた団長を横目で流し、再びあの時のモモを思い出した。

 テスト後の少女に問い(ただ)した内容──未経験だということも驚きだったが、どうやってその技術を得たのか。

 それはあのたった一度鑑賞したショーの記憶を頼りに、ひたすら校庭の鉄棒にぶら下がり、イメージトレーニングをしただけだというのだから、これはもはや天才と言うしか他なかった。

「お前や夫人は努力の人だが、モモは生まれつきともいえる天性が備わっている。それをその組織も見通したんだろうよ。だから、な?」

「あ……」

 凪徒は「そんなに自分の表情から考えていることが分かるのか?」と微かにうろたえ、そしてまた、どうしてこんな話になったのかという経緯(いきさつ)を、不穏な予感と共に思い出した──。