「スパイって……あのスパイ? あの、映画みたいな!? あのモモがっ!!」

 さすがに信じられることではなくて、凪徒はいつの間にか腹を抱えて笑っていた。

 「ほら見たことか」と呆れ顔の暮の表情が向けられ、団長は「そうは言ってものぉ……」とぼやいて後頭部を掻いた。

「笑うな、凪徒。これは冗談じゃなく本当に最上級機密だ。お前もモモの身体能力には一目置いているだろう。あいつがここへ来た時のことを思い出せ」

「え……? あぁ──」

 涙ぐむほどの笑いを(こら)え、何とか落ち着きを取り戻した凪徒は、団長の言葉に二年と数ヶ月前の記憶へ思いを馳せた──。



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