「何なんだよっ、たくっ! どういうことだ!!」

 凪徒の焦燥は誰よりも深く(あら)わだった。

 舌打ちしてはウロウロと見回すが、一番の上背(うわぜい)を持ちながら何の手掛かりも見つけられない。

 犯人が自分を狙いそれをモモが阻止したことは、暮と警察から聞かされていた。

 その後に一体何が起きたのか?

 自分を(かば)って客席に飛び出さなければ、こんなことにはならなかったかもしれないのに……そう思えば思うほど自身が不甲斐なく思えて仕方がなかった。

「凪徒……凪徒~」

 遠く風に紛れて呼ぶ声に気付き、凪徒は後ろを振り返った。

 団長専用のプレハブから小太りな影が手招きしている。

「……団長?」

 近付いた部屋から(こぼ)れる明かりの中に、椅子に腰かけた暮の横顔が目に入った。

「まぁちょっと、こっちゃ()

 (いぶか)しげな表情を向けたまま応じた凪徒も、同じように並べられた椅子に着く。

 何の表情も見せない暮を一瞥(いちべつ)して、団長の言葉を待った。