黄昏の中を駆け回る幾つもの足音が、辺りに不協和音を奏でていた。

 あれからつつがなく計三回の舞台は終焉を迎え、今夜は貸切公演もなかったために夕方には全ての片付けを終えていた。

 暮が捕縛したストーカーも二回目の閉演後警察に引き渡され、団長や数名の責任者が事情聴取を終えたのもそんな時刻だった。

 が、この騒動の一番の功労者であり、被害者でもあるモモの姿が見えないことに気付いたのも、随分と時間が掛かった後だった。

 何しろ初日公演ともなれば、それだけで慣れない作業も多い。

 犯人が捕まったことで皆の緊張の糸も切れ、自分達のことにしか目が行かなくなっていたのが災いした。

「おいっ、見つかったか?」

「いや……みんなが迷惑してると勘違いして、どこかで拗ねてるんじゃねぇの?」

 あちこち探し回る面々が、そんな言葉を交わしながら再び方々へ散ってゆく。

 もう既に日暮れだ。そろそろ探索の目も妨げられる暗い闇が降り始めていた。