「あ……──」

 モモは息を切らしながら瞼を開いた。右手が何か硬い物を握り締めている。

 その先にはそれを掴んだまま倒れ込んだ男の驚きの(まなこ)があった。

 銃声は思っていたよりも小さく、周りの数人がその音と少女の突然の出現に驚いて動きを止めた程度だ。

 他の観客は今でもショーの素晴らしさに酔いしれていた。

 間一髪、男の放った銃弾はモモの手によって凪徒の身体から外れ、幕の上部に小さな穴を開けるに留まった。

 ──やっぱり……目的は自分じゃなかったんだ……先輩を狙うなんて──何故? 人気のある先輩への嫉妬? それとも……?

 モモはその男から震える手で銃を抜き去り、さっとパーカーの前身頃に隠して大きく息を吐いた。

 周りで何事かと言葉もなく見物する観客に、どう説明しようか頭を巡らせる。

 いや、それよりこの男を捕まえなくては。近くに手伝えるスタッフは──?

「モモサマ……見ぃつけた!」

「えっ?」

 辺りに向けられていたモモの視線が、右手首の突然の圧迫に引き戻された。

 目の前の男の手が自分を掴んでいる。

 ──捕まったのは、自分……?