「レディース エンッ ジェントルメン! 皆様、珠園サーカスへようこそお越しくださいました!! ……──」

 華やかな音楽と共に、団長のいかにもな挨拶による幕開け。

 既に同じ調子で仕切られた午前のショーは滞りなく終わったが、予告状の犯人は依然現れていなかった。

 午後前半のショーも同様に始まり、客席から溢れる拍手に迎えられた一番手は可愛いプードル達だ。

 軽快な音楽に合わせて、数匹のプードルが回転する縄を跳び越える。

 彼らの後にゾウやライオン、サルなどの動物が出番を待って陣取っているため、舞台裏はなかなか狭い。

 猛獣達の鳴き声以外にも、中国雑技の少女達や、ロシアから来たイリュージョン・ショーのカップル、火を魔術のように操るアフリカの青年など、ここはどこなのか分からなくなるような沢山の言語が飛び交っていた。

 中盤までは何事もなく進み、やがて球体の中を超高速で走るオートバイのショーも終わりを迎えた。

 お次はフィナーレを飾る空中ブランコ、凪徒と夫人の登場だ。

 夫人は二人の青年の肩を借り、宙に浮かびながら舞台の中央まで移動して、華麗な挨拶とポーズを取った。

 舞台向かって右の支柱から彼らと共に登る。

 二人はブランコのサポート役であり、次期ブランコ乗りの候補でもある。